建設業法第7条第2号イロハとは?15条との違いを解説
建設業許可の申請書を開くと、有資格者区分の欄に「法第7条第2号イ」という表記が現れます。条文を引いてみても抽象的な言い回しが続くため、自分がどれに該当するのか判断しきれないまま手が止まってしまう。文言だけでは区別がつきにくいのが、この規定の実情です。
やっかいなことに、この規定は2024年12月の法改正で呼び名そのものが変わりました。Web上には改正前の名称のまま書かれた解説が残っており、なかにはイとハの中身を取り違えている記事も混在しています。参考にした資料が古かったせいで申請書の記載を誤る、という事態は十分に起こり得るのです。
本記事では建設業法第7条第2号のイ・ロ・ハの区別と第15条との関係、そして主任技術者との違いを解説します。
建設業法第7条とは?

建設業法第7条は、一般建設業の許可を出してよいかどうかを判断する基準を並べた条文です。全体は4つの号で構成されており、第1号が経営体制、第2号が技術者、第3号が誠実性、第4号が財産的基礎という役割分担になっています。
このうち第2号だけが、工事を技術的に管理できる人がいるかどうかを問う規定です。営業所で請負契約を結ぶ以上、その内容が技術的に妥当かどうかを判断できる人間が常にいなければならない、という発想に基づいています。イ・ロ・ハは、その人の能力をどう証明するかという選択肢を三つ並べたものにすぎません。
第2号が求めているのは、営業所ごと、そして業種ごとに要件を満たす技術者を常勤で置くことです。本店のほかに支店を構えて、その支店でも契約を結ぶのであれば、支店にも該当する人を配置しなければなりません。土木一式工事と管工事の両方で許可を取るなら、それぞれの業種について充足を確認する必要があります。ただし1人が複数業種の要件を同時に満たしている場合、同じ営業所であればその人を両方に充てて差し支えないという運用が取られてきました。
専任技術者の文言も変更になった
そして2024年(令和6年)12月13日施行の改正建設業法により、長く「専任技術者」と呼ばれてきたこのポジションは「営業所技術者」へと名称が変わりました。特定建設業の場合は「特定営業所技術者」となり、両者をまとめて「営業所技術者等」と呼びます。条文には「建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者」という職務の定義も書き加えられました。
「専任」という言葉は、その職務に専ら従事するという意味を持つ一方で、責任の及ぶ範囲が営業所なのか現場なのかが伝わりにくいという弱点を抱えていました。営業所という単位を名称に組み込んだのは、その曖昧さを言葉の側から解消する狙いがあったからでしょう。申請様式も順次差し替えられているため、旧名称のまま作られた社内資料を使い続けていると、更新の際に補正を求められることがあります。
第2号イロハのそれぞれの違い

イ・ロ・ハは難易度の順序でも優劣でもありません。技術力の証明方法として並列に置かれた三つの入口であり、どれか一つを満たせば要件はクリアできます。「イから順に検討して、だめならロへ」と読んでしまうと、遠回りになりかねません。
判定が業種単位で行われる点も押さえておきたいところです。複数業種の許可を取るなら、業種の数だけ充足を確認することになります。ある人が電気工事業では資格で要件を満たし、消防施設工事業では実務経験で満たす、といった組み合わせも当然あり得ます。詳しく見てみましょう。
第2号イ:学歴と実務経験の要件
条文上のイは、学歴と実務経験を組み合わせるルートです。許可を受けようとする建設業に対応する「指定学科」を在学中に修めていることが前提となり、そのうえで高等学校または中等教育学校の卒業後は5年以上、大学または高等専門学校の卒業後は3年以上の実務経験が求められます。専修学校の専門課程は5年以上、専門士や高度専門士の称号を持つ場合は3年以上という扱いです。
指定学科は建設業法施行規則で業種ごとに定められています。建築一式工事であれば建築学や都市工学、電気工事であれば電気工学や電気通信工学といった具合に、対応関係があらかじめ決まっているわけです。
気をつけたいのは、学科名の判定基準が許可行政庁によって分かれる点です。建設業技術者センターの指定学科一覧を基準とする自治体では学科名の完全一致が原則とされ、「建築デザイン学科」のように一覧にない名称だと短縮が認められません。一方で、履修内容から類似学科として扱う自治体もあります。卒業証明書に加えて成績証明書やカリキュラムの提出を求められることも珍しくないため、申請先の運用を先に確かめておいてください。
第2号ロ:イ以外の実務経験の要件
ロは、学歴も資格も問わず、許可を受けたい業種の建設工事について10年以上の実務経験があれば該当するという規定です。長く現場を支えてきた技術者を、試験や学歴とは別の軸で評価するための受け皿になっています。
ただし、すべての業種でこのルートが使えるわけではありません。電気工事業と消防施設工事業は、無資格での施工が電気工事士法や消防法に触れるため、10年の経験があっても実務経験だけでは要件を満たせない扱いになっています。
ここでいう実務経験は、建設工事の施工に関する技術上の職務経験を広く指します。実際に施工へ携わった経験はもちろん、発注者側で設計技術者として設計に従事した経験や、現場監督技術者として監督に当たった経験も含めて取り扱うとされてきました。一方で、事務や営業だけを担当していた期間は算入できません。
期間の数え方にも独特のルールがあります。同時期に複数の現場を担当していたとしても、その期間はまとめて1年として数えます。年数は工期の合計ではなく、在籍していた期間で計算するためです。繁忙期に何件も掛け持ちした経験が年数として上乗せされるわけではないという点に、肩透かしを感じる方もいるかもしれません。
もう一つ、同一の期間を複数業種の実務経験として重ねて数えることも原則として認められていません。10年間で内装仕上工事と塗装工事の両方を経験していたとしても、その10年をそのまま両方に充てることはできず、期間を分けて数えることになります。2業種で許可を取る計画なら、単純計算で20年分の経歴が要るという理解が出発点です。ただし、許可を受けたい業種で8年以上の経験があれば、他業種の経験を加えて合計12年以上で認める特例も用意されています。なお空白期間の扱いなど年数の数え方には都道府県ごとの差があるため、最終的な判断は申請先の運用に従うことになります。
第2号ハ:国家資格等の要件
ハに当たるのは、国土交通大臣がイまたはロに掲げる者と同等以上の知識および技術または技能を有すると認定した人です。抽象的な書きぶりですが、実務上ここに入るのが施工管理技士や建築士、技術士、電気工事士といった国家資格の保有者です。
各許可行政庁が公表している有資格者区分の一覧を見ると、「1」が法第7条第2号イ該当、「4」が同ロ該当、「7」が同ハ該当(国家資格取得者等)と整理されています。どの資格がどの業種に対応するかは国土交通省の告示で定められており、たとえば2級土木施工管理技士の種別「土木」であれば以下の業種に対応します。
- 土木一式
- とび・土工・コンクリート
- 石
- 鋼構造物
- 舗装
- しゅんせつ
- 水道施設
- 解体 など
同じ2級土木でも種別が「鋼構造物塗装」なら塗装工事、「薬液注入」ならとび・土工・コンクリート工事に限られるため、資格名だけでなく種別まで確認しておく必要があります。
注意したいのは、資格によっては合格後に一定年数の実務経験を重ねて初めて認められるものがある点です。資格区分一覧の欄外に年数が書き添えられている場合、資格証の写しに加えて実務経験証明書の添付が求められます。資格を取れば自動的にハに該当するとは限らない、という理解で臨んでください。
さらに2023年(令和5年)7月1日の建設業法施行規則改正により、技術検定の合格者を指定学科の卒業者と同等に扱う仕組みが導入されました。1級の第一次検定合格者は大学の指定学科卒業者と同等、2級の第一次検定合格者は高校の指定学科卒業者と同等とみなされ、合格後にそれぞれ3年または5年の実務経験を積めば要件を満たせます。第二次検定を待たず、いわゆる技士補の段階で対象になる点が実務上のポイントです。
ただし指定建設業の7業種と電気通信工事業は、この緩和の対象から外れています。対象業種の線引きは、前掲の福岡県の案内や各許可行政庁の資料で確認してください。
第7条と第15条の違い

一般建設業と特定建設業を分ける基準は、元請として下請に出す金額です。発注者から直接請け負った工事について、下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になる場合には、特定建設業の許可が必要になります。この金額は2025年(令和7年)2月1日施行の政令改正で引き上げられたもので、岡山県の案内などで周知されました。改正前の4,500万円という数字が載った資料もまだ残っているため、契約の前に一度確かめておくと安全です。
そして混乱の最大の原因は、第15条第2号のイロハの並びにあります。第15条ではイが1級の国家資格等、ロが指導監督的な実務経験、ハが大臣認定という構成です。つまり国家資格の置かれる位置が、第7条ではハ、第15条ではイと入れ替わっています。
一般と特定の資料を読み比べているうちに、どちらのイの話なのか分からなくなる。イとハを取り違えた解説が生まれる背景には、この入れ替わりがあります。「イは国家資格」と条番号から切り離して覚えると、参照する条文が変わった瞬間に記憶違いが起きてしまうでしょう。
第7条は一般建設業許可
第7条が定めているのは、軽微な工事を超える規模の工事を請け負うための、基本となる許可の基準です。営業所技術者は第2号イロハのいずれか一つを満たせばよく、資格と実務経験のどちらか一方で要件に到達できます。
見落とされやすいのは、元請であっても一般建設業許可のまま施工できる場面がある点です。特定が必要かどうかを分けるのは元請か下請かではなく、下請に出す金額の総額になります。自社で施工する割合が高い会社であれば、元請として大きな工事を受けても一般のまま対応できるわけです。
第15条は特定建設業許可
第15条第2号ロに該当するのは、第7条第2号イロハのいずれかに該当する者のうち、元請として請け負った請負代金4,500万円以上の工事について、2年以上の指導監督的な実務経験を持つ人に限られます。長く現場にいたというだけでは足りず、元請の立場で一定規模以上の工事を技術的に統括した経験が問われるわけです。
指導監督的な実務経験とは、現場代理人や主任技術者、工事主任、設計監理者などの立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験を指すとされています。作業に従事しただけの期間は含まれません。逆に1級の国家資格を持つ人はイに該当するため、この2年をあらためて問われることがない点も押さえておきたいところです。
もう一つの制約が指定建設業です。土木一式、建築一式、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種では、ロの実務経験ルートが使えません。イまたはハに該当する人でなければ、特定建設業の技術者として認められないのです。施工技術が高度で総合的な管理能力が特に求められると位置づけられているためであり、これらの業種で特定を目指す会社にとって1級施工管理技士の確保は選択肢ではなく前提条件になります。
第7条が必要なのは主任技術者・監理技術者

はじめに整理しておくと、第7条第2号が直接の基準になるのは主任技術者のほうです。監理技術者が参照するのは第15条第2号であり、同じ現場技術者でも根拠となる条文が分かれています。
第7条第2号は許可の要件を定めた規定ですが、その射程は許可の場面だけにとどまりません。工事現場に配置する主任技術者の資格要件は、法第26条第1項が第7条第2号イロハ該当者と定めており、許可の物差しがそのまま現場技術者の物差しとしても使われているのです。
監理技術者が必要になるのは、元請として下請に出す金額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になる工事で、この場合は主任技術者に代えて配置します。資料を読むときは、目の前の記述が主任技術者と監理技術者のどちらの話なのかを条番号で確かめておくと安全でしょう。なお指定建設業以外の業種であれば、第15条第2号ロに該当する実務経験者も監理技術者になれます。
専任技術者は適用の範囲外
営業所技術者(旧・専任技術者)は、営業所に常勤して請負契約の技術的な妥当性を担保する立場です。現場で施工を管理する主任技術者や監理技術者とは、根拠となる条文も置かれる場所も目的も別のものになります。契約の入口を見張るのが営業所技術者、施工の現場を仕切るのが配置技術者、と役割を分けて理解するとつかみやすいでしょう。
求められる資格や経験の水準が重なっているため、同じ人が両方の要件を満たすこと自体は珍しくありません。ただし従来は、営業所への専任が求められる関係で、専任が必要な工事現場の技術者を兼ねることが認められませんでした。
その扱いが2024年12月の改正で見直されています。当該営業所で締結した工事であること、請負金額が1億円(建築一式工事は2億円)未満であること、情報通信機器を活用して現場の状況を確認できることなど、一定の要件を満たす場合に限って兼務が認められるようになりました。人手の限られる会社には使い勝手のよい制度に見えますが、要件を欠いたまま兼務させれば建設業法違反です。計画書の作成や保存も求められるため、運用に踏み切る前に許可行政庁の資料で細部を確認しておいてください。
主任技術者になるには?

主任技術者は、請負金額の大小にかかわらず、建設業者が施工するすべての工事現場に配置が義務づけられた技術者です。500万円未満の小さな工事であっても、許可業者が施工する以上は配置しなければなりません。この点で、一定規模以上の元請工事だけに登場する監理技術者とは性格が異なります。
資格要件は前述のとおり、法第26条第1項が第7条第2号イロハを引用する形で定められています。資格の部分については営業所技術者と同じ基準で判定されるわけです。ただし営業所への常勤性、現場への配置や専任のルールはそれぞれ別に定められているため、資格要件を満たすことと配置できることは分けて考える必要があります。
達成すべき要件
満たすべきルートは三つです。指定学科の卒業に3年もしくは5年の実務経験を組み合わせるか、10年以上の実務経験を積むか、対応する国家資格を取得するか。いずれか一つで足ります。国家資格がなければ主任技術者になれないという誤解が根強くありますが、実務経験だけで要件に到達する道は制度上きちんと用意されています。
そのうえで、所属する建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が前提になる点は外せません。工事のたびに雇い入れるような形では認められず、在籍期間や常勤性を確認できる資料の提出も求められます。「雇用保険被保険者証」および「健康保険資格確認書」の写しなどが典型例です。
配置のしかたにも決まりがあります。公共性のある施設や工作物、多数の者が利用する施設や工作物に関する重要な建設工事であって、請負代金が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上のものについては、現場への専任が必要です。個人住宅のようにこの範囲から外れる工事もあるため、金額だけで判断はできません。専任義務は下請工事にも適用されます。
もっとも2024年12月の改正により、1億円(建築一式工事は2億円)未満の工事については、情報通信機器の活用など一定の要件を満たす場合に兼任を認める特例が設けられました。
国家資格で主任技術者になるには
実務経験のルートと比べたとき、国家資格の強みは証明の手間が小さいことにあります。10年分の契約書や注文書をかき集める作業と、資格証の写しで足りる場合とでは、負担がまるで違うのです。
対応する資格は業種ごとに定められており、土木、建築、電気工事、管工事、電気通信工事、造園の各施工管理技士のほか、建築士、技術士、電気工事士、消防設備士、技能検定の合格者などが並びます。2級施工管理技士でも主任技術者になれる点は、原則として1級の資格者が求められる監理技術者との大きな違いです。1級の取得を待つ必要はありません。
ただし資格によっては、合格後にさらに実務経験年数が課されるものがあります。電気工事士や技能検定の合格者などが該当しやすいため、許可行政庁が公開している資格区分一覧で、対応業種と必要年数の両方を確認しておいてください。受験する資格と級は、その一覧で対応業種を確かめてから決めるほうが遠回りを避けられます。
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イ・ロ・ハは条文ごとに中身が入れ替わります。「イ=国家資格」と単独で覚えるのではなく、条番号とセットで押さえておくことが、申請書の記載ミスと遠回りを防ぐ最短ルートです。第7条ならハが国家資格、第15条ならイが1級国家資格。この対応さえ頭に入っていれば、資料を読み違えることはなくなるでしょう。
そのうえで、どのルートを通っても土台になるのは施工管理の実務経験そのものです。指定学科を卒業していても3年から5年、資格を先に取っても業種によっては合格後の年数が必要になります。どの現場でどの業種の経験を積むかが、要件到達までの速度をそのまま決めてしまうわけです。
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